京大ロー入試 R3(令和3年度) 使用教材・答案構成・感想等 [京都大学法科大学院 法曹養成専攻]
京大ロー入試に無事に合格していたため、1か月以上経過してはいますが使用教材/各科目について受けた感想/覚えている限りの答案構成を書き残しておきます。
問題を捨ててしまい記憶を頼りに書いているため、書いた論点全てを記載しているわけではなく、特に印象深かった部分が中心になります。
何か思い出すたびに補足していきます。
得点や順位は開示が来たらおそらく載せます。真ん中くらいだと嬉しいです。
自身の感触と結果を見比べ今後に生かすために、また来年度以降受験を考えている方や再トライアルされる方などへの助けにもなればと思い投稿しました。
書き手のプロフィール:京大法学部卒業予定、ローへの進学を意識したのが学部2年中~終盤、予備校の利用は無し。※予備校本は使用
Twitter @shoushouga
使用参考書
・憲法
基本書等
・日評ベーシック憲法Ⅱ★とこれを用いた共著者のうちの一人(曽我部先生)による講義
・答案の型は憲法上の権利の作法(小山剛)★を通読
・辞書代わりに工藤ほか憲法Ⅰ基本権
・統治の勉強は趣旨規範本公法系の統治部分、呉明植基礎本シリーズ憲法の統治部分
演習書
憲法演習ノートの人権部分
・民法
基本書等
総則と物権(担保含む)が学部のレジュメ(それぞれ潮見先生、山本敬三先生)
各論が潮見イエロー2冊。不法行為・不当利得・事務管理は軽く一読程度
※総則・物権・債権総論は各教材に沿って進められた授業録音を併用して学習。
・中田契約法を辞書代わりに利用
・家族法の基本書利用は特になし(日常家事債務や親の代理権、代理権の濫用辺りは直前期に軽く確認)。
・全体のまとめとして趣旨規範ブックの改正民法対応版を直前のチェックに利用
演習書
ロープラ民法Ⅰ・Ⅱ 全問解いたわけではなく、半数ほどをピックアップ
・刑法
基本書等
・ベースで使ったもの 呉明植シリーズ★総論・各論、
・第二の基本書として 刑法総論講義案[第4版]、西田刑法各論[第7版]
・重要論点について随時参照 刑法総論の悩みどころ★(本)、刑法各論の悩みどころ★(雑誌記事)
・基本刑法は一部について京大の先生方が好まないという話を聞き使用せず
演習書
・刑法事例演習教材★をメインに利用するも20問強しか終わらず、刑法演習サブノート210問の各論部分を直前に一周
・商法
基本書等
・ベースで使ったもの 高橋美加ほか会社法★[第2版]
・論点整理にアガルートの合格論証集商法・民事訴訟法★
・手形小切手 基本講義手形小切手法(早川)
演習書
ロープラを使うつもりであったが他の科目に追われ数問しか解いていません。
結局会社法事例演習教材★を一応利用することに。答えが載っている演習部分で学部レベルと判断した問題のみさらっと一周。手形法の演習は時間的に間に合わず無し。
・民事訴訟法
基本書等
・ベースで使ったもの 民事訴訟法[第3版]長谷部由紀子
・論点整理としてアガルートの合格論証集
演習書
特になし
基本書等
・ベースで利用は刑事訴訟法の思考プロセス★、足りない部分はリーガルクエスト刑事訴訟法で補完。
・論点整理としてアガルートの合格論証集
演習書等
事例演習刑事訴訟法(古江本)★ざっと一周読む
・行政法
基本書等
・学部で行政法を履修しておらずサクハシ行政法を用いて独学で進めていたんですが正直厳しかったです。
・横浜国立大学の板垣勝彦先生がYouTubeにあげている行政法の授業で学習し、使用教科書も板垣先生の公務員を目指す人に贈る行政法の教科書★
演習書
基礎演習行政法 土田 一周
さぼり癖からか演習が一周終わってなかったり一切手を付けていない科目があったりするので、他の人と比べると演習量が若干少ないかもしれません。
アガルート論証集については適宜基本書等で修正していく必要があると思いますが、有効でした。ハンドブックは細かい理由がないですがまとめ本としてはかなり有効でした。
★が好きな教材です。
その中でも斎藤先生の「刑事訴訟法の思考プロセス」、橋爪先生の「刑法総論(各論)の悩みどころ」、横大同先生他の「憲法判例の射程」が好きです。
なお、院試前には少ししか読んでいなかったのでリストには挙げませんでしたが、憲法答案の流れや審査方法を手っ取り早く理解するには駒村教授の「憲法訴訟の現代的転回」(日本評論社、2013)が良いのでは無いかと思いました。
最後に
令和三年度京大ロー入試 感想 答案構成
・公法系
ただの原告適格で安心したものの思ったより時間がかかりちょうど一時間ほどで書き終えました。ゴミ回収所の設置、骨董屋の許可、火災が起こる可能性のある工事の3問があったと記憶しています。
9条を適宜引用しつつ原告適格の規範を書き、道路法の目的規定、文言などから往来者や居住者の生命身体の被害や交通の便は個別的に保護しているが、単なる財産的利益や生活環境は保護されないとしたうえで個別の検討を開始。問題文に掲載されていない関連法規や他条文の引用はしませんでした。
一つ目はゴミ収集車の騒音やゴミの悪臭が蓄積したら人体への影響が大きく非侵害利益を生命身体と言えそうではあるが収集は週に数度かつ定期的、加えて短時間であることから被害が蓄積したとしても被侵害利益は生活環境に留まると認定、原告適格を否定。二つ目は財産的利益の侵害に留まるため原則否定し需給調整の目的も特に見当たらずやはり原告適格否定。三つ目は生命身体が被侵害利益となるため当然肯定
(2021 10 12細かい条文に即して個別的利益を認定することがほとんどなく、権利利益の性質からふわっと決めてしまったので点数が伸びなかったのだと思います)
人権の問題を一読し少し考えたうえで放置して統治を先に解くことに。問題提起として内閣に決定権があってよいのか、限定してよいのかの二点を挙げたうえで、7条説を書き一点目を肯定、民意の反映という解散の趣旨と問題文の限定は相容れないことを理由に二点目で違憲。69条については触れられませんでした。
人権は年齢制限から14条を思い出すことができず、公務に就く権利ということで13条、22条、25条を想定し結果として13条を選択。よくある人格的利益説の規範を書いたうえで、公務の就労は22条が保障するような単なる職業に留まらず国家機関の一員として自己の生を全うすることは人格的生存に不可欠のようなふわっとした理由付けで人格的利益に。一定の年齢以上は不可能という規制様態の強さも肯定。一方で公務員の育成効率等は実際に公務員として現場で働いている者が最もよく把握しており(専門的裁量)、国家運営に直結するため(政策的裁量)違憲審査基準を緩和、厳格な合理性基準で審査。
目的は公務の円滑な遂行であり、円滑な遂行は結果的に国民全体の利益に資するとして目的の重要性を肯定。手段の適合性は問題文にある理由を引用して肯定、必要性は代替手段を提示して(更なる個別審査などであったと思いますが不確かです)、その手段ではコストが過大で結局円滑な遂行を妨害することになるため目的が達成できない。よって必要性も肯定
結論 合憲
憲法は14条、22条で書いている人が多いと思います。
・民事系
民事訴訟法
勉強不足のため全然わかりませんでした。前半は追認の条文を引くだけ引き、手続きを説明しました。一部追認については何も知らず妄想で回答。一部を認めてしまうと訴訟無能力者を利用する試験的な訴訟が可能となってしまい、追認する側に圧倒的に有利な結果を導くから信義則(2条)に反するとして認められないと結論付けました。
第一問、1問目については音楽機材が抵当権の目的物になるか(従物とかの話)、分離物と登記の衣の話、黙示の合意があったか(そもそもこの場面で黙示の合意という概念が登場してよいか、本件はあったか否か)、最後に不法占有者に対する妨害排除請求の要件設定およびあてはめを行いました。第一問2問目は正当な事由のある占有者に対する要件とあてはめを書いて終わりました。
(2021.9.3 抵当権の範囲の話と、対抗要件として抵当権登記があれば対抗できる範囲の話を少しごっちゃにして書いたかもしれないです。登記の衣といっているので対抗要件は分離・離隔したら無理という話はしているはずなのですが、そもそもの目的物の範囲について一旦不可一体物(370)であれば分離・離隔しても対象となるという話をしたかどうか怪しくなってきました。目的物の範囲に関して黙示の合意の話はしているのでその前提としてさらっと書いていたか、落としていたか曖昧です)
第二問
1問目については119条がちらついたものの適用場面ではないと判断し無視。よくわからないが他人物売買であるから息子と相手方の間に結ばれた売買契約は追認の有無に関係なくずっと有効である。権利者である父親の追認は何かを有効にするものではなく、父親から息子に対して新たに譲渡がされたことを意味すると結論付け、問題文に沿って回答。
2問目については転売利益が特別損害にあたるか、原状回復に基づく支払い済のお金の返還、不動産が権利者に直接返されたため他人物売買の当事者であった息子が返還請求権を行使できるのか(できないと結論)、等を書いた記憶があります。
民法は問題すらうろ覚えですの第二問が特にボロボロだったと思います。
・刑事系
刑法をチラ見したところ第一問も第二問も罪責を3人ずつ聞いてきてたのでこれは時間がまずいと考え先に刑訴に着手。要証事実によって伝聞の場合と非伝聞の場合があるため、それぞれの場合について証拠として使うことができるようになる条文を引き写すだけの作業になってしまいました。
(2021 10 12 点数が伸びなかった理由はよくわかりません)
刑法
第一問目
記号とか忘れたので誘った人(陽動みたいなことした人)、誘われた人1、誘われた人2(誘われた人1が帰った後もさらに犯行続けた人)とします。
誘った人と誘われた人1, 誘われた人2 が邸宅侵入罪と窃盗未遂罪の牽連犯の共同正犯。
論点として書いた記憶があるのは
0.順次共謀の可否を含めた共同正犯の成立
1.鍵が偶然空いてて人の看守するといえるか (肯定した)
2. 財産的価値のない絵が財物といえるか (答案では肯定したが、次の着手の際に財物=絵とすると絵を盗もうとしていないため着手が認められないような気が、不要か
目的物が違うのは錯誤になるだけなのでやはり言ったほうがいい…?そうすると不能犯の検討の方が不要?)
3. 実行の着手があったか (絵だけを考えると無理そうであったが、そもそも犯人らは一般的な金銭を想定していたため、不能犯にならないかの検討をし、肯定)
誘われた人 2 の更なる犯行は、誘った人、誘われた人2にも客体の錯誤として故意が認められるが、共犯の射程が及ばず誘われた人2のみに帰責、犯行の具体的内容は忘れました(強盗殺人ですかね)。
第二問目
構成要件に普通にあてはめアイドルのそのような行為をしている動画は外部的名誉を抽象的に毀損するし、アイドル活動という業務を抽象的に妨害する行為でもある。更に名誉棄損については公然性もある、正当化もないとして両方肯定。
動画を消すと騙して金奪った人:詐欺罪、二項強盗殺人を検討した上で殺人
100万円については普通に詐欺罪肯定、振り込みは1項説と2項説があったような気がしたので現金と同視できるという理由付けで1項詐欺罪
アイドルが派遣した元やくざを刺殺した行為について、一時的に弁済猶予されることが財産上の利益といえるかどうかを検討、請求権は現にアイドルの元にあり身元も特定されているため再度請求される可能性が高い、よって移転が具体的・確定的とはいえず財産上の利益の移転は無し。ただの殺人罪が成立
(もしかして強盗関連の未遂罪も成立?)
アイドル:
一人目に対して金銭を要求した行為について恐喝未遂
金銭を要求する手段として行う適法行為の告知も恐喝罪の脅迫にあたるが、本人が畏怖しなかったため未遂に留まる。ただの削除要求ではなく裁判をちらつかせた脅し行為と過大な額は社会的相当性を欠き35条の正当化は無し。恐喝未遂成立。
2人目に対して元やくざを送った行為について恐喝
恐喝罪の教唆犯の検討(共同正犯にすべきでした)。構成要件には該当しそうだが、100万円という確定した額、暴行は無しという点を考慮すると社会的相当性があり35条によって違法性が阻却されると構成。不可罰。
刑事系は機械的にあてはめていく作業が多く、深い論点が見つからなかった印象です。
第一問の邸宅侵入の可否と窃盗の着手辺りは立ち止まってしまいました。
(2021 10 12 問題を見返すと大体の罪責や論点は書いていたようでありがたいことに点数が出ました)
・商法
第一問
1. 重要財産の譲渡該当性、決議の瑕疵、影響が無かった特段の事情があるか、決議を欠く代表取締役の行為と93条ただし書
2. 定款に定めがある場合
重要財産該当性の判断で定款の存在を考慮することしか思いつかず、1と同じようなことしか書けませんでした。349条の存在を完全に忘れていました。
3. 代表取締役による代理権の濫用と107条類推適用
第二問
23条の2を適用することしかできませんでした。
小問2も詐害行為取消権の無資力要件をイメージして資金と残存債務の差のようなものををごちゃごちゃ考えていたら終わりました。
手形小切手法が出ないことに安心したものの商法は全体的に不完全燃焼感がありました。
総括
試験当日の感想としては、できたと感じる科目は少ない一方で全然できなかったと落ち込む科目は無く、結論として耐えたような気はしていました。
刑事系、公法系は過去問と比べると感触がよかったのですが、問題自体が易化していたのもあると思います。
民事系は民法の第二問と民事訴訟法がよくわからなかったんですが他の受験生もそうだと言い聞かせました。
商法は一問目の2と二問目が感触としてはよくなかったです。
ここまで読んでいただいた方ありがとうございます。問題を間違えていそうなど、明らかに違っている箇所がございましたら指摘いただければと思います。