京都大学法科大学院(京大ロー) 2021年度前期雑感(授業・定期試験)
前期が終わったので、授業と試験について記録しておきます。
同内容の記事を投稿している方も沢山いると思いますが、まあ人によって感想は様々だと思うので投稿しといてもいいかなと。
授業・試験
初めは対面で数回やり、途中からオンラインになり、また最後の数回は対面に戻りました。
試験は対面でした。
以下、授業と試験の感想です。
選択科目としていないものについては必修(基幹)科目です。
一週間の流れです
火曜日 商法総合① 公法総合①
水曜日 刑法総合① 国際私法①
木曜日 経済法①
金曜日 民事訴訟実務の基礎
・月2 民法総合①(YK先生)
・主に契約法分野をやりました。あと不当利得ちょっとくらい。
・ソクラテスは基本ランダムです。対面の時は今回あたる可能性がある人はこの20人ですってスライドに出されてその中から当てられていく感じでしたが、マイクの本数が理由でこの方式になったぽいので、普段通りだと完全にランダムなのかなと思います(何らかの法則はあるみたいですが)。
・民法総合事例演習を改正法に対応させるために改訂している最中とかで、その改訂予定の問題を使用して事例問題を毎週一問ずつ扱いました。民法苦手(嫌い)なのもあり、全問きつかったです。事例自体が難解な上に授業が要件事実どっぷりで進んでいくのでリアルタイムでついていくのは大変です。始まる前に要件事実の本を読んでおいたほうがいいです。
・予習はだいぶ時間かかりました。事例問題の末尾に参考・必読文献が載っています。全文は読まないにしてもどんな内容が指定されているかチラ見する程度でも予習が捗ります。(どんな論点が隠れているかわかるので)
・授業はだいぶわかりやすいので、ちゃんとやると民法が強くなるんだろうなあと思います。債権法改正にがっつり絡んだ教授から経緯や趣旨について生の話を聞けるのは勉強になりました。
・ソクラテスについて補足すると、要件事実をずらずらと答えさせるところに当たるとかなり苦しいです。それ以外についてはスライドを眺めてひねり出したら何とかなることも多いです。これは完全に何となくですが過去の学部ゼミ生には優しいような気がしました。でも同属性なのに逆に厳しくされているような人もいましたのでよくわかりません。
・その日の授業終了後に、当日扱った事例問題の要件事実表と、それに加えてうちのクラスでは授業スライドが配布されました。要件事実表はいうなればその事例の一つの有りうる答えが載っているようなもので、だいぶ助かりました。スライドも文句を言いつつ結局試験前にお世話になりました。
試験は授業でやった論点が組み合わさったキメラみたいなやつが出ました。AさんがBさんと締結した請負と委任が混ざったような契約(請負委任の内容がACとの売買契約をすること)を解除する際の諸々の主張反論、、Cさんに対しても追完に代わる損害賠償請求するような事例だったと思います。要件事実ベースで答案を書くことが大前提の講評だったので少なくとも民法総合①ではそのほうがいいです(そうする人が大半だと思います)。普通に時間無くて二問目は全体の20%くらいしか書けませんでした。単位出たので死ぬほど感謝してます。
試験勉強では授業の復習としてスライド・要件事実表を眺めてました。
・月3 刑事訴訟法総合①(IK先生)
・ケースブック刑事訴訟法から先生がピックアップしたQを扱います。前期は捜査全般でした。
・ソクラテスは席順にあてていく感じで、多少変なことを言ったとしても答えた覚えのない趣旨を酌み取ってもらえます。試験は辛い点数が来ました。無難なことを書いたつもりでいて試験後の満足感は全科目の中でもトップクラスだったんですが、点数は一番低かったです。
・大量の裁判例を扱い順に検討・整理していくため、きちんとやれば刑訴法が強くなると思いますが、それぞれの規範や射程を全部覚えるのはなかなかきついので、結局単純な学説や最高裁判例を丸覚えすることになりそうです。
・書籍化されている川出先生の判例講座が捜査編と非常に相性が良く、Qの答えが順番に書かれているような場所もあります(ケースブックと判例講座なので当然といえば当然かもしれませんが ※普通に著者にいらっしゃいましたね……)。基本書のみで予習するのと比べ格段に効率がいいです。川出判例講座は本自体も非常にわかりやすく、刑訴版の橋爪悩みどころみたいな感じです。東大教授凄い。
・試験は余罪取り調べ、捜索の範囲、被疑事実との関連性といった結構オーソドックスな論点が出たので薄っぺらい知識ではダメだったのかもしれません。試験前はアガルートの論証集を必死に読んでました。授業の復習を全部やる余裕はありませんでした。それが表れた点数だったかもしれません。
・火3 商法総合①(KM先生)
・商法事例演習教材を前からやっていきます。
・授業は、基本書知識については先生が解説してくださる部分もありつつ、Qを席順に当てられます。授業も分かりやすく、シンプルに商法の事例問題が強くなると思います。基本書一冊で十分に予習対応可能です(が、○○については江頭何p載ってますというのを頻繁におっしゃられるので、参考書といいつつ江頭も必須のような気がします。 普段使いの基本書は紅白本です)。
・後期は扱うテーマがマイナーで大変との噂ですが、前期は超メジャー論点の寄せ集めという感じで、きちんと授業ノート作ると司法試験まで使えそうです。
・試験もだいたいが典型論点の寄せ集めという感じで、非公開会社における株式発行の無効事由、譲渡承認未了株主への議決権行使と裁量棄却、利益供与及び損害賠償とそれについての責任限定契約などが出ました。結構書くことはあるので条文当てはめつつ各論点をサクサク倒していく感じです。全体講評では細かい事実をしっかり使えという趣旨のことが書いてありますが、全部書ききってなおかつ事実まで評価しつくすのは筆の速さが足りませんでした。
・試験対策としては授業の復習が演習するのと同じ効果になるのでそれをしたうえで、事例演習教材の途中にある解説付きの「演習」部分を解きました。過去問も数問解きました。
・火5 公法総合①(NT先生)
・行政救済法全体を扱います。ケースブックが指定されますが実際に扱うことはありませんでした(この判例はケースブック何番という形でのみ使いました)。
・教授のワールド全開で授業についていくのがかなり大変です。前期の授業の中で初めて聞く内容が一番多い科目でした。藤田行政法等が指定されていますが特に使いません。教授によるとこの世に行政法の教科書として認められるものは10冊もないらしいです。ソクラテスする回の方が少なく基本的に講義形態で、問いを扱ってその答えを聞かれる回が数回あったのですが、問いが難しすぎて何もわからないものが多かったです。
・授業内容自体は説得的な部分も多く非常に面白かったのですが、そのまま司法試験対策に直結するかは微妙です。完全に教授の体系に乗っかれるのであればそれで良さそうです。普段使ってる教材の論証方法に、授業で扱った考え方から自分でも使えそうな部分を組み込んでいく感じにします(定期試験については授業で習った話で書いたほうがいいと思います)。
・試験は応答の処分性が一問、税務署職員の行為についての国賠が一問でオーソドックスな感じでした。点数は別にして単位は来るようです。とりあえず授業で習った枠組みと規範を詰め込みました。過去問数問解きましたがそれ以外の特別な演習はしていません。
・水2 刑法総合①(TK先生)
・ケースブック刑法(塩見他)を扱います。同じ名前の本が弘文堂からも出ているので間違えやすいです。前期は共犯以外の刑法総論を扱いました。
・ソクラテスは名簿順でした。CB回を数回→事例1回→CB回を数回⇒……という形で14週授業があります。事例回で大量の生徒を消費して名簿の後ろまで使い切ってしまうため、名簿の後ろの方の人は毎回事例しか当たらず、前の方の人が毎回CBのよくわからないQをあてられるという不遇な状態でした。
・授業形態としては、2,3回ケースブックのQを扱い、1回事例問題の検討を行い、の繰り返しです。正直ケースブック部分については細かい学説や裁判例を駆け抜けていくため、元々難解な刑法総論が更に深みにはまります。めちゃくちゃ予習して各学説/裁判例を一応は頭に入れたうえで授業に臨むと強くなるのかもしれませんが、刑法にそこまでリソースを割けないのでCB部分は微妙でした。刑法総論は橋爪先生の悩みどころがおすすめです。
・事例回は半強制的な事例演習と思ってやれば勉強になると思います。授業中に事例の後半が終わらないことも度々でしたが、その場合は疑問個所をメールで聞けば丁寧に返していただきました。
・試験はこれまでの年度と比べ圧倒的に簡単で正当防衛、不作為犯、過失犯の基本的な知識が聞かれ、事実をどれだけ拾えるかという勝負になりました(うちのクラスの出来が悪く、難しいのを出すと爆死することが予想できたからだという話を他クラスの人から聞きました………)。
・試験勉強は授業の復習というよりは刑法事例演習教材などで普通に演習することをお勧めします。過去問を数年分と、自主ゼミで定期的に刑法事例演習教材は解いていました。読書としては前記事でおすすめしている悩みどころと呉基礎本を読んでました。後々思い出しましたが、十河先生の刑法事例演習が出てすぐに1周読んで刑法を思い出してました。
・水5 国際私法(NY先生 男性の先生) 選択科目
・学部で取っていたのもあり選択しました。ケースブック国際私法、国際私法判例百選、LQ国際私法を使います。選択科目にしては珍しくソクラテス方式でした。学部よりも事例に寄った形で分かりやすかったような気がします。
国際民事手続きは数回軽く扱い他は準拠法関連でした。反致のような難しい論点は後期に回されており、準拠法選択は財産法などがメインでした。家族法も後期です。
他の選択科目と比べると覚える量はやっぱり少ないのかなという感じです(次の経済法も少ないような)。ただ他の科目とはだいぶん違う考え方が登場するので、ある合わないがあるやもしれません。
司法試験を国際私法にするなら後期の国際私法② 来年度国際民事手続法、国際取引法等もとった方が良さそうなんですが大変なので悩んでいます。
試験は大問1の中で承認執行と国際裁判管轄の軽い事例が一問ずつ、大問2が特徴的給付、分割指定、実質法的指定(or抵触法的指定)に関するもの、大問3で公海上の不法行為準拠法、先取特権と債権譲渡の優劣でした。
書くことはもりもりという感じでしたが、授業でやったことからしっかり出ているので怖がり過ぎなくてもいいかもしれません。民法が嫌いだったり覚えることが多いのが嫌で、倒産や労働を避けたいという人にはお勧めします。人数は20人弱だったと思います。
過去問を友人と数年分解きました。演習書はやる余裕ありませんでした。
・木1 経済法①(WM先生) 選択科目
学部ではとっておらずローで初めて取りました。教科書は泉水他「独占禁止法」弘文堂を使いました。受けたことないですが予備校の授業ってこんな感じなのかなという授業でした。大事な規範部分や定義を繰り返し、教科書の重要な部分を強調し、頻出分野を厚く説明するといった形式で、授業中の事例検討や答案の書き方の指導も熱心な先生です。
今年初めての試みのようでしたが、基本的な講義は事前配布した録音を使い、木1の授業時間中は事例の検討、最新の話、応用的な話のみをする形式でした。非常によかったです。
経済法という科目自体についてはどこかのサイトでみましたが刑法と似ていると思います。問題となる行為がどの類型に該当し独占禁止法に違反する可能性があるかを見定め、要件を充足しているかを検討、違反となった場合にどのような罰則等がされるかまでを条文に即して起案する形です。しかも、(少なくとも前期の範囲では)刑法でよくある条文から大きく離れた論証がほとんどなく、構成要件該当性のみを検討する刑法みたいなイメージです。
試験は範囲をめちゃくちゃ絞っていただいたので、教科書でいうと数十ページ分なのでは?という量でした。その宣言通りの範囲から共同行為と企業結合が一問ずつ出ました。後期は逆に教科書一冊分らしいですが。
試験勉強は演習書の範囲部分を解きました。
普段から添削もしていただけるのでホスピタリティがすごいです。おすすめです。
・金4 民事訴訟実務の基礎(KT先生)
・14回のうち大半は要件事実について学びます。弁論準備手続き等についてさらうのが1.2回と、執行保全について扱うのが1回ありました。要件事実部分は予習を前提とした授業と↓の課題の解説授業が半々くらいあります。
・5回くらい?要件事実の整理と整理した理由について書く起案提出(提出しなかったら1点ずつ引かれる、おそらく全員毎回出してました)が課されます。
・要件事実についての本(大島本や新問題研究など)を授業開始前に読んでおくのと完全な初見とではかなり違うと思います。これは民法についても同じです。
・最初の2回くらいは基礎中の基礎という感じで、「一週間の中で一番ちょろいんちゃう?」と友達と話していたんですが、回を追うごとに難しくなっていきました。課題についても3回目くらいから一気にレベルが上がりしんどくなりました。鬼門といわれている理由がわかりました。終わってから見ると全科目の中で一番きつかったです。
・試験については、要件事実の整理と理由について書く大問1、弁論準備手続きについての大問2、執行保全についての大問3問(小問2つ)が出ました。講評での要求レベルが高いのもあり、どれくらい書けば耐えていたのか、例として少し詳し目に書きます(問題と講評を手元において参考にしていただければと思います)。
1問目は大きく言うと債務不履行解除とそれに対する弁済期の合意や同時履行といった抗弁、相殺の再抗弁などがでてました。時間の関係で弁論準備についての2問目丸々と執行保全の3問目の小問1が白紙になってしまったので流石に落単だろうと思っていたんですが、単位来てました。
・1問目の理由部分は時間ギリギリに殴り書きで1p半ほど書いたんですが、今自分で見返しても読めない字で埋め尽くされているので、それでも単位が来たということは結局1問目の主張整理(要件事実の適示)が一番大事なのではないかと思います。
要件事実部分は請求原因が二つある問題でしたが上位の人以外は一つしか適示していないらしく、自分も当然ながら履行遅滞解除のみを書きました(もう一つは不能解除らしいです)。
訴訟物、請求の趣旨、請求原因(履行遅滞解除)の適示事実が幸いにもほぼ全てあっていて、これが単位が来る方向に響いたのかもしれません。
抗弁は再抗弁は、そもそも書いていないもの(先立つ不履行解除の抗弁)、要件事実の一部を落としているもの(弁済期の合意の抗弁:抗弁中の商事代理は書けていたが一部既履行部分について抜けていたなど、相殺の再抗弁:意思表示書き忘れ)、書けていたもの(同時履行)という感じでした。
試験問題を見ると大問ごとに点数は振ってありますがその通りに採点された場合確実に単位は来ていないと思うので、明らかに大問1しかも主張整理の比重が高いです。
全体について
期末試験は基幹科目については複写式なので複写したものが手元に残ります。講評も全科目詳しいの出してやるんやからしっかり復習しろよという圧が伝わってきます。
ただ講評、点数、自分の答案を見比べて復習できるのはだいぶん助かります。
民・民実は授業の復習が優先だと思います。逆に刑は演習中心でいいと思います。ただ試験中に民法と民実もしっかり演習したほうが良かったと後悔したので、結局当たり前なんですが全科目過去問演習とかやったほうがいいです
入試の点数は前の記事で記載していたんですが、期末試験の点数についてはとりあえず載せません。
どれくらいのこと書いて何点来たのか詳しく知りたいというのがあれば基幹については複写答案もあるので共有可能です。コメントかツイッター(@shoushouga)で言ってもらえれば。選択科目はここで書いた以上のことは忘れました。
ひとまずここで終わります。
わざわざ足を運んで読んでいただきありがとうございました。