京法メモ

京都大学法科大学院を卒業しました。令和5年司法試験に合格しました。

京都大学法科大学院(京大ロー) 2021年度後期雑感(授業・定期試験)

後期が終わったので、授業と試験について記録しておきます。

 

授業・試験

ほぼ全て対面でしたが民事訴訟法総合①の授業のみオンラインでした(試験は全科目対面)

 

以下、授業と試験の感想です。

(選択)としていないものについては必修(基幹)科目です。

 


一週間の流れです

月曜日 刑事訴訟法総合② 民法総合②

火曜日 商法総合② 法曹倫理

水曜日 公法総合②

木曜日 (選択)国際民事手続法 民事訴訟法総合①

金曜日 (選択)国際私法② 刑法総合②

 

・月2 刑事訴訟法総合②(HS先生)

・前期と同様にケースブック刑事訴訟法のQをやります。前期と同じで全問扱うわけではなく、次回はこの番号を扱いますというお知らせが毎週出ます。なので先々予習するのは厳しいです。まあ毎年ほとんど同じ問題っぽいので上回生に聞くか先輩ノート見れば大体どれやるかわかります。

・分野としては公訴・訴因・証拠・その他という感じで捜査以外大体という感じです

ソクラテスは名簿順ですが、誰からスタートするかがランダムになってます。ただ同じくらいの周期で来るので何となく次当たるかなぁとはわかります。前期よりは詰められるというか、適当な答えでは放してくれないです。

・説明はわかりやすいので証拠分野とか特に強くなると思います。

 

試験は1問目が違法収集証拠、不任意自白の証拠、これらからの派生証拠の扱い、2問目が訴因変更の要否・可否と盛りだくさんでした。サクサク処理していかないと間に合わないと思います。

試験勉強では授業で扱ったQや判例を全部復習するのは時間と能力的に無理だったので、基本刑事訴訟法Ⅱの試験範囲分を何度も読むだけになりました。

 

 

・月5 民法総合②(NY先生)

・配布される問題を毎週一問ずつ扱います。前期と同じで民法総合事例演習の改定中の問題だと思います(授業中に言われるこれはだれだれが作った問題ですが……を聞いていると全部がそうではないのかもしれない)。

・後期は物権(担保分野以外)、不法行為、不当利得、法人を扱いました。最初の二つがメインで、試験もそこから出ました。

・授業方法が少し特殊で、名簿順にソクラテスをしながら進んでいくのですが、その内容を教授がパワポ画面にタイピングしていき徐々に授業板書が完成していくシステムでした(そのまま授業後に配布されます)。なのでクラスごとに若干の違いがあると思います(1組と3組を担当されていたはずです)。

ソクラテスはそんなに詰められないですが、前期同様に細かいQは存在しないので不意打ちに合うことがありました(2組は細かいQが書かれた追加レジュメを先生が配布していたようです)。民法は人と予習をやるのも良いと思います。

・回にもよりますがどの分野も普通に難しくて予習には結構時間がかかりました。

・参考資料が毎回4~5個、回によっては事前学習資料も配布されます。事前学習資料は最低限読んでおいたほうがいいです。授業後には前期と同様に要件事実表が配布されます。うちのクラスではそれに加えて前述のパワポスライドと授業録音も配布されました。

 

・試験は交通事故を題材にした不法行為で一問、94条2項類推による権利移転と売買による権利移転で対抗関係を作り177条の話に持っていく問題が一問出ました(他の構成もあるようですが)。どちらも授業で扱った内容に近いものが出ているので、授業の復習が一番試験勉強になると思います。714条類推の要件を普通に大間違いしていたので渋い点数が来ました。

 

火3 商法総合②(YT先生)

・商法事例演習教材の二部を扱います。教材を見てもらったらわかると思うんですが、内容的な意味では後期試験で一番しんどかったかもしれないです。

ソクラテスは席順に行きますが、ずっと同じ方向に当て続けるのかと思いきや、切りのいい部分で開始地点を変えられることがあり少し焦りました。

・そんな詰められないので心配はしなくていいです。

・前期同様に江頭はあったほうがいいです。

・前期よりも内容がニッチなものも多く、先輩ノートを参照する機会も多かったです。普段使いしている教科書類を見てもなおさっぱりわからないようなやつに時間をかけすぎてもあれですし、ある程度の答えを知ったうえで授業に臨んだ方が結果的に得られるものも多いと思います。授業は0.5回目の復習と位置づけて聞いていました。

 

試験は小問5つで監査等委員会設置会社における新株発行について1問、単元株、拒否権付種類株式、議決権制限株式について1問、株式交換契約の承認について1問、株式交換に際しての新株予約権買取請求について1問、多重代表訴訟について1問、でした。

事実までしっかり拾うという試験ではなく、各制度の仕組・条文をちゃんと理解しているかという試験でした。授業の復習をするのが第一だと思います(巻末の事例演習でもいいと思います)。

おそらくですが、試験の出来が大きく分散してしまってるのをぎゅっと縮めたうえでの相対評価になってそうです。(逆に前期の商法総合は団子になってるような気がします)

 

火5 法曹倫理(TT先生)

・主に弁護士倫理を扱います

・初め2回は大教室で民訴の先生によるガイダンス的な感じで、最後の方の2回も大教室で裁判官倫理、検察官倫理が1回ずつあります。それ以外の通常部分10回ほどはクラスごとに弁護士の先生による弁護士倫理の授業です。

・通常部分は5人程度の班が作られるのでそこでレジュメを作成して発表するのが30分程度あり、残りの時間を解説される感じです。発表は各班一回です。

・授業の数日前にレジュメを提出したら先生がコメントを付されるのでそれに対する回答も含めて発表する形式でした。授業で追加的なソクラテスとかは無かったです(クラスによるかも おそらくうちのクラスがいちばんやさしい先生だった?)。

・レジュメは弁護士倫理という本に載っている問題を検討する必要がありますが、弁護士職務基本規程という緑本と呼ばれる本がメイン教材になると思います。

 

試験は具体的な事例について弁護士倫理上の問題を指摘していく形で小問6問くらいだったと思います。試験対策としては①自分のクラスの学生が作った各回のレジュメを読む、②緑本を読む、③先生が配布されるパワポスライドを読むなど、色々なパターンがあると思いますが、自分は④他のクラスで配布されているそのクラスの先生が作った詳細なレジュメを友人に見せてもらってほとんどそれで勉強しました。めちゃくちゃありがたかったです。

 

 

水4 公法総合②(SM先生、DM先生)

公法総合②は前半が行政法総論、後半が憲法訴訟を扱いました。

公法総合は次年度以降なくなり、行政法総合、憲法総合へとカリキュラムが変更になっていると思いますので参考程度にお願いします。

 

 

・前半部分(行政法総論)は他クラスの行政法の先生が作ったレジュメを用いて授業が進んでいきました。予習課題・復習課題が各回レジュメと同時に配布されるので、その問題を前の席の人から順番に当てられるという形でした。半期のうち一回だけ当たり、全員使い切るとソクラテスはそこで終了し講義だけの授業になりました。

・ケースブック行政法が指定されますが、他の判例集でも問題ないです。自分は橋本先生の行政法判例ノートを常用していました。ただケースブック行政法みたいに長い判示の引用は無く、当たる時には原文を手元に置いておかないと答えられない場合があるので注意したほうがいいです。百選を使う場合も同じことが言えると思います。

判例の構造(規範の構造、規範と事実の対応関係)を重視しつつ、事例検討を意識した授業をしていただけるので、勉強になりました。時間の制約もありペースは早めでしたが学生目線の授業だと思います。

・試験は河川条例をベースにした事例で、審査基準が存在する場合の違法審査をする問題でした。

・試験対策としてはレジュメの事例をもう一度考えたり、演習書等で授業で扱ったテーマの事例演習をしたりするのがいいんじゃないかと思います。

 

 

・後半の憲法訴訟部分は違憲立法審査権、部分社会、憲法判断の方法、立法不作為などを扱いました。最後の数回は具体的な事例をベースに憲法判断の方法(全部違憲なのか部分違憲なのか適用違憲なのか合憲限定解釈をするのか適合的解釈をするのかetc..)について検討しました。

ソクラテスはクラスをいくつかのグループに分け、どの日にどのグループが当たるのかが先に指定されます(各グループ1回ずつでした)。その日のうちに何回か当たることはあります。

・レジュメをベースに授業が進められます。全てがソクラテスで進むわけではなく、講義しつつ時々レジュメのQをその日に当たるグループの人に振るという感じでした。

・最後の数回は具体的な事例をベースに憲法判断の方法について詳しく検討していくのですが、定期試験はそことは無関係な範囲から出る場合もあります(最高裁判所裁判官の国民審査をベースに立法不作為と抽象的違憲審査について考える問題が出ました)。

・回によっては「こういう問題が出たらこのように書きましょう」「このように論証しましょう」と熱心に教えてくださるのでその範囲から出そうな気がめちゃくちゃしますが、それ以外をおろそかにした結果試験は死にました。

・試験対策としては授業を復習するのがベストだと思います。

 

 

木1 国際民事手続法(NY先生 女性の先生)

・国際裁判管轄、外国判決の承認執行をメインに扱い、仲裁、二重起訴、国際司法共助etc..を扱います。

・レジュメを基に授業が進んでいきます。その回に扱う判例・裁判例に関して質問がされます。人数が少なく(8人くらい?)3回に2回、もしくは4回に3回くらいは当たってたような気がします。教科書としてロースクール国際私法も用いました(かなり古いのでAmazonとかで安く買うのがおすすめです。自分はAmazonで800円で買いました)。国際私法百選もあったほうがいいです。

・教授はやさしいです。

・試験は扶養料・離婚の国際裁判管轄についての大問が一つ、もう一つの大問は小問数個で構成されていて、懲罰的損害賠償の承認執行、司法共助、国際仲裁合意について出たと思います。幅広く出るので試験勉強はまんべんなくやったほうがいいです。手薄だった国際仲裁はわからな過ぎて泣きそうでした。

・対策としては授業の復習でいいんじゃないでしょうか

 

木2 民事訴訟法総合①(YK先生)

民事訴訟法の前半です、訴訟要件、訴えの提起、当事者、裁判所、弁論主義etc..を扱いました。教科書の前半部分ですかね。既判力や多数当事者訴訟などは来年前期の民事訴訟法総合②で扱います。

ロースクール民事訴訟法、ケースブック民事訴訟法を両方扱います(2冊あるのが曲者で、予習にかなりの時間がかかりました)。どの問題を扱うのかは一覧表が配られますが、分量的に全部はできずに次週はこれとこれと今日の残りをやりますみたいな感じで指定がされます。

ソクラテスは完全ランダムとされています。ただ一定のグループのようなものは存在するみたいで、自分が属するグループの人が当たり始めたらそろそろ来るなと身構えることはできます。

・2年次の授業で一番しんどかったです。

・Qへの回答をした後に追加質問のような形で問答が進む場合もあり、長い人では10分以上つかまることもありました。

・突然地雷を踏みぬくことがありますが、運が悪かっただけと割り切り、落ち込まないでください。

・法律用語の使い方は特に意識をしてください。正確な言葉選びを重視されます(前期の民法総合①も同じことが言えます)。

・授業を受けただけでその回の内容全てを理解しきることは到底無理だと思うので、気を落とさず、わからないことがあれば都度メールで質問していけばいいと思います。質問対応は非常に丁寧で回答文書がめちゃめちゃわかりやすいので積極的に利用するといいと思います。

 

・試験は反訴と重複起訴について一問、もう一問は講評が出ておらずイマイチわからないのですが、当事者適格、代理権に関するようなものが一問出ました。

・2問目もぐちゃぐちゃで1問目も反訴の仕組みを完全にミスって的外れな答えを連発したにもかかわらずBが来たので、授業と違い採点は甘めだと思います。

・試験対策としては広く浅く復習したほうが良くて、基本レベルの問題演習をしておくのが一番いいのかなと思います(ロープラ、ロジカル演習等)。授業の復習だけするのは時間を食う一方で狭く深くやることになり、ちょっと外されるときついので。

 

金1 国際私法②(NY先生 男性の先生)

・前期の国際私法①と同じ先生で授業の進め方も同じなのでそちらを見ていただければと思います。

・前期と比べ人がかなり減ったため(詳しく覚えてませんが履修者は10人くらいだった気がします)、ソクラテスはほぼ毎回当たりました。予習も結構時間を食われます。

ロースクール国際私法と百選は必須だと思います(百選は購入しない人はその旨伝えてくださいと言われていたので無くてもいいかも)

・前期と同様レジュメがかなり詳しめなのでずっと使っていこうと思っています。

 

・試験は協議離婚の準拠法、重国籍を絡めた離婚準拠法、未成年後見人選任審判の国際裁判管轄、未成年後見人選任審判の準拠法、相続準拠法が出ました。

・前期と同じように、授業終盤に扱ったテーマでもお構いなしに出るので全範囲の均等な復習が必要だと思います。授業の復習に加えてCASE30などをさらっと見ておくと楽かもしれません。

 

・後期は前期と比べて司法試験選択科目にすることを前提に受ける人の割合が高いと思います。

・国際民事手続法・国際私法は選択科目にしては珍しくソクラテスをする授業なのでその点理解した上で履修されることをお勧めします(他の司法試験選択科目は録音配布方式であったり完全講義形式のものが多いと思います。国際法とかは双方向かな?)

 

金2 刑法総合②(SJ先生)

・ケースブック刑訴のQを扱います。前期の先生より予習量は多い気がします。前期と比べると延長はそれほどなかった気がします

・時々事例検討回があるのも前期と同じです。

ソクラテスは曖昧な答えでは放してもらえず、ある程度は詰められますが、心配するほどではないです。

・比較的穏当な結論で解説していただけるので司法試験対策としても勉強になる点が数多くありました。

・質問対応は結構さばさばしてますが要点はきちんと解説してもらえるので積極的に聞きに行くと強くなると思います。

 

・試験は替え玉受験による文書偽造及び偽計業務妨害、替え玉受験の報酬に関する詐欺、替え玉受験の事実についての名誉毀損などが出ました。採点は前期ほどは甘くはなかったです。

試験対策としては普通に刑法事例演習教材などで事例演習をする+各論のあまりやらないような罪を復習しておけば大丈夫だと思います。

 

全体について

1科目増えていたこともありますが、前期より試験日程が過密でなかなかきつかったです。試験が無い科目を入れるのもアリだと思います(弁護士実務とかとってる人多いです)。

 

試験勉強にかけた時間は

商≧民訴>>民法≧刑訴>国際私法≥国際民事手続>公法、刑法、法曹倫理 

という形でしたが、結果としては

国際私法、国際民事手続法、法曹倫理>刑法>刑訴、商法>民訴、公法、民法

という感じになりました。ちょっと様子がおかしいですが、中身の重たさとしてはやっぱり民法・民訴・商法が頭一つ抜けてるのでみんな頑張る結果こうなってしまったのかなと思います。