京法メモ

京都大学法科大学院を卒業しました。令和5年司法試験に合格しました。

司法試験対策で役立った教材リスト

司法試験受験の際に使っていたオススメの教科書・参考書・判例集をまとめる機会があったため、ブログにも残しておくことにしました。ロー入試対策としても司法試験過去問に関するもの以外は有用だと思います。

 

2023年11月21日

無事に合格していました。再現答案は作れなかったので無いですが、大体の点数順位を最下部に載せておきます。

 

憲法

○論文対策

憲法 事例問題起案の基礎 岡山大学出版会

→事例問題の解き方・書き方を丁寧に説明してくれる参考書。事例演習の前の1冊として最適

憲法日本評論社

→簡潔で分量も少ないが、必要最低限のことが書いてあって使いやすい教科書。薄いので何度も読み返すことが出来る。

 

憲法の地図 大島

→最新判例はカバーされていないものの、主要な判例はまとめられており、判例だけでなく主要な論点についての解説もされている。それぞれの判例が審査のどの段階で使えるのかが明確になっており、非常に使いやすい。判例集というよりは判例重視の論点解説書のようなイメージをしている。試験前はこれを何度も読んでいた。

 

判例から考える憲法 

→演習書。事例問題について複数の立場からの検討がされており、解答例自体は無いものの、それに近い解説がある。アガルート等が販売している参考答案があればなお便利

 

憲法ガール remake addition / Ⅱ

→参考答案がある司法試験問題集。解説ではかなり高度な部分もあり、参考答案も時間内には到底不可能+学生には書けないような箇所も存在するが、この論点にはこういう攻撃防御方法があるのかとかなり勉強になる。参考答案そのものを目指すのではなく、道具を増やすイメージで利用するのが良い。

 

○短答対策
伊藤塾 呉明植基礎本シリーズ 憲法

→人権以外の短答知識の総まとめとして利用。簡潔に書かれており何度も読み返すことが可能。

 

※過去問対策は全科目ぶんせき本を利用。ガールシリーズは副読本的なイメージで利用していた。 

 

行政法

行政法解釈の技法

→①行政行為論や救済等の論点についての大島解説、②主要論点についての橋本解説、③予備試験についての伊藤解説および参考答案、の3部構成。どの章も物凄く有益であり、事例問題の検討に特化している。下手をすればこの1冊だけで何とかなるのではないか。司法試験過去問の演習と共に本書を用いて予備試験の問題も解くと幅広く勉強ができる。令和5年司法試験では最近予備試験で出た論点が出題されたこともあり、解いておいて損は無いと思われる。橋本行政法判例ノートどの相性が良い。

 

・基本行政法 

→基礎知識はこの一冊で十分

 

(・行政法総論を学ぶ 曽和俊文

→総論に絞った本で物凄く読みやすく、尚かつ理解が深まる。しかし紙版は現在絶版となっているため新品では買えない。法学教室連載の書籍化であり、救済法分野は書籍化されていないためMARUZEN ebookなどから見るしかない。)

 

(※司法試験段階では発売されておらず未利用

興津征雄 行政法

行政法総論分野について丁寧かつ詳細な記載がある。試験対策という意味では特に二部が有用だと思われる。過去問演習で特定の論点が登場した際の辞書的な利用に適しているのではないか。)

行政法ガールⅠ、 Ⅱ 

憲法ガールと同様に深く検討がされており勉強になる。ただ、憲法ガールよりは解答例・解説共に抑えめの印象。論述をそのまま覚えたり、参考答案を目指したりすることがまだ出来る気がした。

 

・基礎演習 行政法 土田

→1冊目の基礎的な演習本として最適。ただ上記の技法が出現したため、あえてこのステップを踏まなくても何とかなるような気がする。

・事例研究 行政法

→2冊目の演習書としては解説が丁寧で最適。しかし過去問演習+上記の技法での予備試験演習をすれば十分であり、さらにこの問題集を解くのは行政法対策が過剰な気もする。

 

民法

○論文対策
・趣旨規範ブック民法 辰巳法律研究所

→主要論点の最低限のまとめに使える。直前期はこれを何回も読む作業をしていた。一元化教材として利用している人が多い。

 

民法の基礎1

民法総則はこの本のシェアが圧倒的であり使わざるを得なかったが、学部などで用いていたレジュメ(自分は潮見先生)をメインに使っており、同書は辞書的に用いていた。基礎という割にかなり論点に踏み込んでおり、補論部分はかなり高度な部分も。

 

・講義物権・担保物権  安永

→解説が丁寧かつ穏当で非常にわかりやすい。判例の解説もありがたい。ただ総則と同じくレジュメ(山本先生)をメインに使っていたため辞書的に利用。

 

・プラクティス民法債権総論

→著者による授業の音声と書き込みがあったので同書をを利用していた。短文事例が大量に載っているがその解説は無い点、特定の論点がどこに載っているか分かりにくいことがある点から、同書単体では使いにくい可能性がある。正直ストゥディア債権総論で十分な気がする。詳しいものが良ければ中田債権総論が丁寧だがいずれにせよ辞書的に使うことになりそう。

・潮見イエロー1 2

→契約法・不当利得は潮見イエローで十分。不法行為も同じく潮見イエローで十分。ストゥディア民法でも十分かもしれない。
契約法について辞書的に太いのを用いたければ中田契約法がおすすめ。わかりやすい。

 

・呉明植 基礎本シリーズ 家族法

→簡潔でわかりやすい。薄いので一気に読め、周回できる。改正法にも対応している。論文対策にも短答対策にもなる。


民法はちょうど良い問題集が少ない

・ロー入試段階では「ロープラクティス民法1 2」から半数ほどピックアップし解いていた。
・司法試験段階ではローの授業(民法総合・事例演習の問題)の復習を主にやっていた。ただ適切なノートや解説がなければ独学は不可能。

・新考える民法1〜4 平野

→司法試験の数ヶ月前から友人と一気に4冊消化(答案作成まではせず、毎週数問ずつ読んできて疑問点を交換し合う方式。債権各論は全部をやった訳ではなく一部分のみ)した。こねくり回した問題が多く、どこまで役に立ったかは正直のところ不明だが、見たことない問題を見ても動じにくくなる。難易度はかなり高い。過去問演習が終わって他の問題集をやりたければの選択肢になりそう。

 

○短答対策
民法全 潮見佳男

→網羅性に不安を感じたため、直前気に一気に読んだ。基本的な知識が入ったあとの確認に使うのが良さそう。担保物権あたりはかなり薄いので注意。

 

刑法

○論文対策
・呉明植 基礎本シリーズ 刑法総論、各論

→少し引用される学説が古かったり不十分・不明確な部分はあるが、他の教材や授業から適宜修正すれば足りる。何よりスラスラ読めるので何度も読み返すことが出来る。

 

・基本刑法Ⅰ、Ⅱ

→思いのほか太いのが気になり利用していなかった。それが気にならないのならこの2冊を選ばない理由は無さそう。

 

刑法総論の悩みどころ、各論の悩みどころ

→橋爪先生の緻密な議論が好きで何周も読んでいた(各論は書籍の発売以前は雑誌連載しか無かった)。主要論点についてかなり踏み込んだ検討がされており、刑法が好きな人にはおすすめ。各論の財産犯に関するいくつかの章はどの本よりも理解が深まったと思う。図書館等で借りてその部分だけでも読む価値あり。
 最近増えている学説問題対策にもなる。しかし基本刑法や呉明植基礎本で十分に対応可能なので無理に読む必要は無いと思う。共犯論や過失論については自説推しが強いため注意。

 

・応用刑法Ⅰ、Ⅱ  大塚

主要な論点について、事例問題を解く際のポイントが非常に詳しく紹介されている。基本刑法を利用していなかったが、問題なく使えた。元は法学セミナーの連載であり、Ⅰは書籍化がされたものの現時点でⅡは未刊。図書館等でコピーするしかない。

・刑法事例演習 メソッドから学ぶ  十河

→掲載問題数は多くないが、事例問題を解く際にどのように考え、論を組み立て、答案を構成するか、極めて丁寧に解説されており1冊目として最適。

・刑法事例演習教材

→50問近くの比較的長文の事例問題が掲載されている。友人と自主ゼミをする際に使っていた。解説は簡潔だが必要最低限のことは書いてあるため、他の教科書と共に読み込めば独習可能。レベル感としては司法試験くらい。

○短答対策

特別な教材は無く、他の科目と同様資格スクエアの短答攻略クエストを回していた。

 

会社法

会社法  高橋美加ほか

→いわゆる「紅白本」。通常の教科書と異なり、試験で聞かれそうないわゆる論点が登場した際には、「○○か」などと当該論点が疑問形かつ太字で記載されており、効率よく勉強ができる。条文の索引がある点も非常に便利。意外と情報量は多く何周もするのは骨が折れる。
リークエ、紅白本、田中亘会社法のいずれかを用いる人が多いが上記の点に惹かれ紅白本を利用。ローでは江頭の利用が推奨されるが太すぎるため辞書的にしか使えない。

 

・趣旨規範ブック民事系

民法と同じく有益。直前期はこれを何度も読んでいた。

 

・商法事例演習教材

→ローで指定された教材。ローで扱うメイン部分は解説が無いため、どこかのローや予備校の解説が必須。

 ローで扱う事例問題とは別に少し短文の演習問題(定期試験の過去問らしい)が数十問あり、解説がついている。直前期はこの演習問題と解説を何度も読み返していた。

 

・ロープラクティス商法

→上記の事例演習教材が使いにくい場合には、論点が網羅的で解説も比較的わかりやすいためおすすめ。

 

民事訴訟

・リーガルクエス民事訴訟

→共著の弊害も少しあり、人気・不人気はかなり割れる。しかし必要十分なことは全て書いてあったように思う。

 

・ロジカル演習民事訴訟法 越山

→問題数は少なめだが、教授による参考答案と極めて丁寧な解説がある。民訴が苦手な人におすすめ。

 

・事例で考える民事訴訟法  名津井ほか

法学教室連載の書籍化。内容はかなり高度な部分もあり、刑法の悩みどころに近い印象。

 

・ロープラクティス民事訴訟

→事例演習というよりは網羅性を重視して参考書として読んでいた。読んでいただくとすぐわかると思うが、共著による弊害がかなり大きい。

 

・最新重要判例250 民事訴訟法 山本和彦

→1人の教授による一貫した解説が特徴。百選のような判決要旨の下に、その判例を1行ないし数行でまとめた文が記載されている点が大変便利。明らかに不要な論点については除外して直前期に一気にさらった(令和5年は極めて特殊な論点が出題されたので、全判例を見ておくべきではあった)。

・趣旨規範ブック民事系

→同じく有用

 

刑事訴訟法

・基本刑事訴訟法

→基本刑法の刑訴版。極めてわかりやすい。リーガルクエストと比べ網羅性は劣るが、問題演習や過去問演習をして載っていない論点はその都度確認していけば、同書で必要十分な気がする。他書と比べ圧倒的に読みやすい。

 

判例講座 刑事訴訟法 2冊  川出

→刑法悩みどころの刑訴版かつ判例を少し重視しているような本。解説が極めて丁寧で理解が深まる。基本刑訴で足りない部分を補うことが出来る。

・エクササイズ刑事訴訟法

→刑法事例演習教材の刑訴版のような本。論点がランダムに埋め込まれた事例問題が十数問掲載されている。問題数は少し少ないが主要な論点は複数回登場するなどメリハリがある。解説も簡潔でおすすめ。

・伝聞法則に強くなる 後藤

→名前の通り伝聞証拠に特化した本。苦手な人にオススメ。伝聞が出題された年の司法試験の解答例もあるが、複数人の弁護士が分担しており、書き方が若干異なる点が玉に瑕。

 

国際私法

・国際関係私法入門 松岡

→国際私法、国際民事手続法、国際取引法が1冊にまとまっており非常にコンパクトな教科書。説明も簡潔でわかりやすい。LQでもよいが民事手続・取引分野は別の教材でカバーする必要がある。

・1冊だけで国際私法  辰巳法律研究所

→前半が趣旨規範ブック、後半が司法試験の問題文+出題趣旨+受験生の再現答案1通で構成されている。国際私法は学説が乱立したまま固まっていない部分が多いので、このまとめ本を利用して自分が取る立場を固めて一気に覚えることが出来る。
 後半については解説が無いため過去問対策には不便。趣旨規範ブックとしての利用が主となる。
 過去問演習には別途ぶんせき本を利用するか、予備校の解説を利用する必要がある。


・国際私法case30

→一般的な問題集。考査委員をしている先生が最もマシな問題集と言っていたので利用。共著のため解説の質にばらつきはあるが比較的丁寧。

 

・国際私法判例百選

→百選の解説部分を論点解説書として利用し、直前期に1周読み込んだ。
 地裁、高裁の割合がかなり多い。判例百選と併用する短文問題集(判例百選で学ぶ国際私法)が最近発売されていたが、ローの授業とかなり重なっていたようにも思う。

 

 

司法試験の成績通知書が来たので参考に

公法系  BB

民事系  AAA

刑事系 CA

国際私法 60点弱 

 

論文順位 460位台

 

計 960点台

総合順位 430位台